2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧
嫁好きを拗らせている久遠専務に言われ、取り敢えず相馬の元に向かった 涼介。 相馬の落ち着きがない原因など、一つしかない。雪也の事だ! 支社長室に着き、扉を二回ノックする。 「失礼します」 その声に怒気を感じることはなく、静かだ。 扉を開けて入室…
「各務君、ちょっといいかな?」 相馬が雪也に携帯を渡してから一週間程過ぎた頃、会社の廊下で専務に呼 止められた涼介。 「久遠専務…、はい、何でしょうか?」 久遠は、年の頃は五十代前半で、なかなかの切れ者だ。本来ならば、本社 の重役になっていても…
雪也が相馬のマンションへ引っ越して二、三日経った頃、相馬から新品の スマホを渡された。 「雪ちゃん、コレ持ってて」 「携帯…ですか」 「そう、雪ちゃん持ってなかったよね。今時の小学生だって、持ち歩いてる っていうのに」 「すみません。今迄、必要…
ある日、雪也は晩ご飯の席で、相馬と涼介に出会った時から気になってい た事を聞いた。 それは、二人の関係性だ。涼介の相馬に対する態度や言葉使いは、どう見 ても上司と部下という感じではない。 では恋人同士なのかというと、そうでもないらしい。そもそ…
相馬のマンションに移り、数日が過ぎた。 その間もいろんな出来事があった。例えば、体力テストの日の朝、朝食の 席で雪也がいつもの制服ではなく、ジャージ姿に気付いた相馬は理由を聞 いてきたので話すと、会社を休んで学校に行くと言い出した。 「僕がい…
荷物の運び入れや買い出しがひと通り終わり、一息つく雪也。 と、そこへ涼介が言った。 「もうこんな時間か。腹減ったな、飯にしようぜ」 「そうだな、食べに行くか。雪ちゃん、何が食べたい?」 「…えっと、簡単なモノで良ければ、俺作りますけど」 先程の…
とりあえず、身の危険は無くなった雪也だが、相馬との攻防戦で、激しく 気力、体力共に消耗させられていた。 (合気道の試合でも、昇級試験でも、こんなに疲れること無かったのに…。 何だろう、このもの凄い精神的ダメージは) はぁ~、と大きな溜息が漏れ…
話を逸らして、誤魔化す気なのかと思ったが、どうやら違ったらしい。 逃げねば!… だが、どうやって? あっさりと捕獲された雪也は、自分の 迂闊さを呪った。 「あの、相馬さん」 「何? 雪ちゃん♡」 「俺にはまだ早いと思います」 「そんな事ないよ。僕の…
あからさまに離れていく雪也に、相馬はショックを隠し切れず訴えた。 「雪ちゃん、君、僕の事 “男なら見境なく襲う奴” だと思っているでしょ? それ誤解だから」 「あっ、そうですよね。相馬さんなら相手に困る事なんて無いですよね。何 か…すみません、不…