2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

雪也の攻防戦~5

嫁好きを拗らせている久遠専務に言われ、取り敢えず相馬の元に向かった 涼介。 相馬の落ち着きがない原因など、一つしかない。雪也の事だ! 支社長室に着き、扉を二回ノックする。 「失礼します」 その声に怒気を感じることはなく、静かだ。 扉を開けて入室…

雪也の攻防戦~4

「各務君、ちょっといいかな?」 相馬が雪也に携帯を渡してから一週間程過ぎた頃、会社の廊下で専務に呼 止められた涼介。 「久遠専務…、はい、何でしょうか?」 久遠は、年の頃は五十代前半で、なかなかの切れ者だ。本来ならば、本社 の重役になっていても…

雪也の攻防戦~3

雪也が相馬のマンションへ引っ越して二、三日経った頃、相馬から新品の スマホを渡された。 「雪ちゃん、コレ持ってて」 「携帯…ですか」 「そう、雪ちゃん持ってなかったよね。今時の小学生だって、持ち歩いてる っていうのに」 「すみません。今迄、必要…

雪也の攻防戦~2

ある日、雪也は晩ご飯の席で、相馬と涼介に出会った時から気になってい た事を聞いた。 それは、二人の関係性だ。涼介の相馬に対する態度や言葉使いは、どう見 ても上司と部下という感じではない。 では恋人同士なのかというと、そうでもないらしい。そもそ…

雪也の攻防戦

相馬のマンションに移り、数日が過ぎた。 その間もいろんな出来事があった。例えば、体力テストの日の朝、朝食の 席で雪也がいつもの制服ではなく、ジャージ姿に気付いた相馬は理由を聞 いてきたので話すと、会社を休んで学校に行くと言い出した。 「僕がい…

雪也と相馬そして涼介~8

荷物の運び入れや買い出しがひと通り終わり、一息つく雪也。 と、そこへ涼介が言った。 「もうこんな時間か。腹減ったな、飯にしようぜ」 「そうだな、食べに行くか。雪ちゃん、何が食べたい?」 「…えっと、簡単なモノで良ければ、俺作りますけど」 先程の…

雪也と相馬そして涼介~7

とりあえず、身の危険は無くなった雪也だが、相馬との攻防戦で、激しく 気力、体力共に消耗させられていた。 (合気道の試合でも、昇級試験でも、こんなに疲れること無かったのに…。 何だろう、このもの凄い精神的ダメージは) はぁ~、と大きな溜息が漏れ…

雪也と相馬そして涼介~6

話を逸らして、誤魔化す気なのかと思ったが、どうやら違ったらしい。 逃げねば!… だが、どうやって? あっさりと捕獲された雪也は、自分の 迂闊さを呪った。 「あの、相馬さん」 「何? 雪ちゃん♡」 「俺にはまだ早いと思います」 「そんな事ないよ。僕の…

雪也と相馬そして涼介~5

あからさまに離れていく雪也に、相馬はショックを隠し切れず訴えた。 「雪ちゃん、君、僕の事 “男なら見境なく襲う奴” だと思っているでしょ? それ誤解だから」 「あっ、そうですよね。相馬さんなら相手に困る事なんて無いですよね。何 か…すみません、不…