雪也の攻防戦~2
ある日、雪也は晩ご飯の席で、相馬と涼介に出会った時から気になってい
た事を聞いた。
それは、二人の関係性だ。涼介の相馬に対する態度や言葉使いは、どう見
ても上司と部下という感じではない。
では恋人同士なのかというと、そうでもないらしい。そもそも涼介には、
可愛い彼女がいる。(デートも儘ならず、振られるのでは、と怯えていた
というか、泣いていた)
「 涼介さんは、相馬さんの秘書なんですよね?」
「そうだよ、なんで⁉」
「いえ、あの、涼介さんの相馬さんに対する接し方が、何となくキツイなっ
て思って…」
「えっ、それは…コイツに優しくしろって事⁉」
相馬を指差して、物凄く嫌そうな顔をされた。
「雪ちゃん、優しい♡」
「いえ、そうは言ってません」
「雪ちゃん……」
「ただ、ちょっと気になっていたので…。単なる上司と部下にしては、随分
親しそうだなって。あと、俺の事も前から知っているみたいだったから」
「ああ、まぁ、…君の事は知っている、というか知っていた。学生の頃から
聞かされていたからね」
「学生…、大学生ですか⁉」
「いや、高校一年の時。同じクラスになってさー、その時から何故かコイツ
とワンセットにされた。そしてそのまま今に至っている」
「それは…大変でしたね」
「そうなんだよ~。まさか、会社に入ってまでセットにされるとは思わなか
ったから。で、雪也君の事は、その時から知ってる。…写真も見せてもら
ったからね」
「写真⁉」
雪也は思わず椅子から立ち上がって聞いた。初耳だ。
「……あるんですか⁉」
踏み込むのは危険だと分かっていたが、聞かずにはいられなかった。
「……あるよ。見る⁉」
相馬は寂しそうな笑顔を見せた。これで二度目だ、と雪也は思った。
「ハイ」
「……おいで」
相馬の後に着いて行くと、そこは相馬の寝室だった。
やっぱりか~!嫌な予感的中!!
因みに、相馬の寝室にはキングサイズのベッドが置かれている。
相馬はドアを開けて、雪也を誘う。
「さっ、入って♡」
「イ、イヤです」
「大丈夫だよ⁉」
「大丈夫じゃない気がする」
「……何もしないから」
「今の間は何ですか⁉ 嘘ですよね!」
「ホントに何もしないから、入ろ♡」
雪也はイヤイヤ、と頭を横に振る。
「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから。何もしないから♡」
「何故、三回も言うんですか⁉ 怖い!」
「ラブホ前で、合コン帰りの男女みたいな会話になってるぞ」
二人の会話に、呆れながらも突っ込みを入れる涼介だった。