雪也と相馬~4
ゴールデンウィーク前日、学校の休み時間、雪也が日直日誌を書いている
と、月也が声をかけてきた。
「雪也」
「ん~⁉ 何」
返事しながらも、書き込み続ける。つい先日まで、少し硬い表情ばかり浮
べていた雪也が、今は前より少し柔らかくなった気がする。
そう感じた月也は、雪也に言った。
「なんか、良かったな…」
「……え?」
雪也は顔を上げると、安心したような笑みを浮かべている月也がいた。
月也には、雪也が相馬と一緒に住む事になった経緯を話していたので、
余計な心配をさせてしまったようだ。
幼い頃からずっと一緒にいた所為か、雪也のちょっとした態度や表情を見
逃さず、気にかけてくれる。
雪也の性格をよく知っている月也は、いつも、ただ黙って側にいてくれて
いた。幼稚園の頃から、それはずっと変わらない。
ただ近頃は、そうやって話をするでもなく二人でいると、『同級生カプも
悪くない♡』と言ってくる薫が、地味にウザい。
そして、そんな薫に好意を寄せているらしい月也に、同情する雪也だった
そんな雪也の思いをよそに、月也が聞いてくる。
「どお⁉ 相馬さんって言ったっけ。との同棲生活」
「同棲じゃない同居だ。殴るぞ」
面白がってる様な言葉の月也に、怒った様な言葉で返しながら、相馬の
マンションに移った日のことを思い出していた。
ー ※ ー
「部屋の中、ちょっと散らかってるけど」
驚かないでね、言外にそう告げて部屋の鍵を開ける相馬。
中に通されリビングに入ると、驚くべき光景が目に入った。
ソファーや床に、使用済タオルや脱ぎ捨てられた衣類が、そのままの状態
だったり、読みかけ、あるいは読み終えた新聞は、テーブルの上で拡げら
れたまま、山積みの新聞は雪崩を起こして、床にまで落ちている。
お酒の缶や栄養ドリンクの瓶は、以下同文。
『激務だった』とは聞いていたが、何をどうすればこんなになるのか?
絶望的な表情をしている雪也に、苦笑いしながら相馬は言い訳する。
「週に三日、ハウスキーパーさん頼んでいたんだけど、いつもの人が坐骨
神経痛になってしまって、先週末からずっと掃除してなくて……、えっと
なんか、…ゴメンね⁉」
「…取りあえず、ここの片付けしますね」
そう言って、雪也は テキパキ動き始める。タオルや衣類を集め洗濯カゴに
入れ、缶と瓶はそれぞれ別の袋に回収して、キッチンの隅に置いた。
新聞紙は、重ねて紙紐で束ね、これも部屋の隅に置いておく。
後は、軽く掃除機をかけて終了。三十分くらいで終わらせると、相馬は
感心して言った。
「凄いな雪ちゃん、これならいつでもお嫁に行けるね!」
「行きません!」
相馬の言葉をバッサリと斬り捨てる雪也だった。