雪也と相馬~3

    相馬の言葉に、雪也は顔を上げ聞いた。

 「相馬さんの会社に、俺を雇って貰えるって事ですか?」

 「まさか! そんな事したら、労働法違反で僕犯罪者になっちゃうから。

    それは無理!」

 「えっ? え、それじゃあ…」

 「うん、だから僕と個人契約して、住込みで僕のマンションで働く。という

    のはどうかな⁉ 給料はちゃんと払うよ、…まあ、とわ子さん並みとはいか

    ないけどね。雪也君は、料理 家事全般できるって聞いたけど⁉」

 「…あの、確かに俺は一通り出来ますけど。でもそれは、お手伝いレベルで

    すよ⁉ とわ子さん並みとか無理ですし、特に料理…フランス料理なんて

    作れません!」

    雪也は、藤堂家の献立を思い浮かべる。流石に、毎日フランス料理という

    訳ではなかった(どちらかというと和食が多かった)が、それでも、手の

    込んだ料理だった。

 (大体、舌の肥えてるこの人に、何を作れって言うんだ。無理ゲーすぎる)

 「僕そんなに良い物ばかり食べて無いよ。特にここ最近激務で、良くてファ

    ミレス。時間がない時はファーストフードやピザ、コンビニ弁当とか……

    もう外食飽きた。家庭料理が食べたい!」

    渋面の雪也の思考を読みとったかの様に、相馬が言った。

 「ここに帰って来ればいいのでは⁉」

    一応、雪也は意見を述べてみた。

 「ここからだと、会社メチャクチャ遠いから面倒。あ、因みに、僕のマンシ

    ョンから雪也君の学校まで、歩いて数分の距離だけど…どうかな⁉」

 「よろしくお願いします!」

    即答してしまった。

    我ながらチョロい、と思わずにはいられない雪也だった。