雪也 月也 薫

     始業式が終わり、皆それぞれの教室へと向かう。

    雪也も今日から中学三年生になった。とはいっても、雪也の学校では、

    二年から三年になる時はクラス替えがないので、三年生の生徒達は他の

    学年に比べ、何となくダラけた印象を受ける。

    教室に入り、空いている席に座ると、

 「雪也」

 「雪ちゃん」

    親友の奏 月也と斎 薫が声をかけて来た。

    二人とも、幼稚園の時からずっと同じクラスで、部活も一緒だった。

    雪也は小学三年の時から始めた合気道を、学校の部活でも続けていた。

    親友二人は、雪也につられるように合気道を習い始め、同じ様に、有級者

    にもなっていた。
    
    何をするにも三人一緒だったからか、他人からは『三つ子』『三兄妹』等
    
    と呼ばれることもあった。

    雪也の家の事情も知っていた二人だったが、同情を嫌う雪也の性格を理解

    していたので、今までと変わらない態度で接してくれた。

    雪也も言葉にはしなかったが、そんな二人の存在を、有り難く思った。

    薫が、座っている雪也に背後から覆い被さり、抱きついてくる。

    正直、雪也はちょっと困っていた。彼女自身気が付いてないのか、二年の

    夏頃から急激に成長を続けている薫の胸が、雪也の背中に当たるのだ。

 (一年くらい前まで、ツルペタだったのに)

 「…重い、薫、また体重増えた?」

    誤魔化す様に言う。

 「ヒドい! 増えてますけど、確実に増えてますけど。でも、それ本人には

    言っちゃダメだよ。ね 、月也⁉」

 「増えてんのかよ。そりゃ、ダメだろ。雪也の細腰じゃ確実に折れちまう

    だろ! 」

 「細腰って言うな!」

 「えっ! そっち⁉」

    月也の本気(?)のボケに、二人がツッコミを入れる。

    雪也、中学最後の年が始まった。